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最高裁判所第三小法廷 昭和48年(オ)813号 判決 1975年10月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告補助参加人代理人藤井正博の上告理由第一点について

国の公務員であつた者が一定期間勤務した後退職したことを要件として支給を受ける普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるところ(最高裁昭和三八年(オ)第九八七号同四一年四月七日第一小法廷判決・民集二〇巻四号四九九頁参照)、地方公務員等共済組合法に基づく退職年金は、前記普通恩給とその趣旨・目的を同じくするものと解されるから、右退職年金が当該公務員本人及びその収入に依存する家族に対する生活保障のみならず損失補償の性格を有するとした原審の認定判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点及び第三点について

原判決は、被上告人らの被相続人亡菊次の生存を前提とする同人の得べかりし退職年金につき、同人の逸失利益として被上告人らが相続によりこれを取得したと認定したものであつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づき原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第四点について

被上告人萩原とき子は、亡菊次の得べかりし退職年金につき、同人の逸失利益として相続によりこれを取得したものであり、同人の平均余命年数の間は同被上告人の受けるべき遺族年金と重複することとなるから、同被上告人がその間遺族年金を受領するのは不当に利得することになるものというべく、したがつて、菊次の平均余命年数を基準として遺族年金の現在額を算出したうえ、これを控除すべきものとした原審の認定判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己)

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